明治40年(1907年)創業、越前指物の技術を継承する家に生まれ、3年前に五代目となった小柳さん。「幼少時から父や祖父の仕事を見ていて、手伝いもしました。出来上がった家具を見てお客様が喜び、お礼を言ってくださるのが子どもながらに嬉しくて、自分も役に立ちたいと思ったものです」。伝統工芸士として挑戦も続ける父を尊敬する一方、「モノづくりは楽しいし、研ぎや面取り、彫刻など自社製品を手掛けますが、自分はいわゆる技術一筋、職人気質ではないのかと。今は、販売にも力を入れています」と、父とは別の視点で家業や産地の先を見据える。イベントや百貨店での販売では、来店者の表情、仕草、反応などに細かく気をくばり、接し方や言葉遣いなどを柔軟に変える。その丁寧な接客が購入につながり、中には県外から自店訪問にも繋がった。「今は、父から教わった“守破離”の“守”の段階。そこから成長しながら、越前指物の産地全体を盛り上げていきたいです」。
越前市には、昔の面影を残す寺町通りや総社大神宮、歴史を感じる建造物、文化施設などが数多く点在している。そのすべてが気に入っていると話す小柳さん。「子どもの頃、自分の住む街には何もないと思っていましたが、今では素晴らしい歴史や文化、建物がある素晴らしい街だと自慢できます。特に寺社仏閣は好きで、日頃から散歩でも訪れています。四季折々で風景が異なりますし、それがとても綺麗で美しい。見ているだけでも心が安らぎますよね」。写真は、東京の百貨店での販売後に訪れた浅草寺での一コマ。
取材内容は2022年12月現在のものです。